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◇男と女の更年期◇
日本人女性の平均閉経年齢は50歳くらいといわれていますので、 更年期はだいたい45〜55歳くらいと考えることができます。 男性にも更年期があります。 この更年期をどのように考え、どのように対処したらよいのか、 一緒に考えてみませんか。
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更年期は、その後の「第二の人生」をさらに実り豊かにするための大切な準備期間です |
更年期になると女性は、何らかの不調に悩まされるようになります。いわゆる「更年期障害」ですが、それ自体はけっして異常なことではなく、程度の差こそあれ、女性ならば誰にでも起こる、自然なからだの変化です。
大事なのは、この時期を上手に過ごせるかどうかが、そのあとの第二の人生のあり方を大きく左右するということです。
その意味で、更年期というのは、第二の人生を健康でイキイキとしたものにするための準備の時期でもあるのです。
女性と同じように、男性にも「男性の更年期」があります。「やる気がない」「どうも不快だ」「やたらと汗が出る」…。男性ホルモンの低下と過度なストレスが原因で起こることが多い。「年だから…」で片づけず、きちんと備えることが大切です。
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女性のからだとホルモン |
思春期から成熟期を経て、経閉を迎えるまで、女性のからだはホルモンによってコントロールされています。からだの発育から、女性特有の性周期から、妊娠し出産まで「女性の一生はホルモンに支配されている」といえます。 またホルモンは、からだばかりではなく心身のバランスの潤滑油としての役目ももっています。ホルモンの分泌量に少しでも変調が生じると、心とからだの両面にさまざまな反応があらわれます。 更年期とは、このようなホルモンの変調によって引き起こされた「ドラマチックな変化のとき」なのです。
ホルモンを分泌する器官や組織(卵巣、下垂体、副腎、甲状腺、すい臓など)を内分泌腺といいます。内分泌腺から分泌されるホルモン濃度は、ng/mlとか、pg/mlといった単位で示されますが、1ngは10億分の1g、1pgは1兆分の1gという量にあたります。こんな微量ながら、これが少しでも変化すると、臓器や組織は変調をきたします。
このホルモンを上手にコントロールし、分泌量を微調整しているのが、脳にある視床下部というところです。実際に行動するのは視床下部のすぐ近くにある下垂体という器官です。内分泌腺の司令塔が下垂体というわけです。
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女性ホルモン(エストロゲン)の働きと年齢的変化 |
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■その主な働きは ・乳房や性器の成熟を促す ・丸みを帯びた女性らしい体をつくりだす ・子宮に働きかけて受精卵が着床できる 状態をつくる ・心を安定させる ・コレステロールの増加を抑制する ・カルシウムの形成、吸収を調節し、 骨を健康に保つ などです
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具体的には、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下と下垂体からの卵胞刺激ホルモンの異常までの増加というアンバランスが、更年期の特徴であり、からだ全体の状態にさまざまな影響を与えます。 |
人間のからだは年齢とともにからだのあちこちに変化が現れてきます。つまり老化をしていきますが、多くの臓器は死ぬまで機能をしています。しかし卵巣だけは早い人で30代半ばぐらいから老化が始まり、40代後半になると、卵巣機能はかなり低下してきます。 卵巣機能が老化してくると、エストロゲンの分泌が不規則になり、下垂体からの司令(卵胞刺激ホルモンの刺激)を受けても、卵巣がいうことをきかなくなってきます。そのため月経も不規則になります。卵巣が下垂体からの司令になかなか反応しないために、下垂体は「がんばれ、がんばれ!」と、矢のような催促をすることになり、下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモンの量が、ますます増えてきます。その量は数倍から数十倍にも増加します。 このエストロゲンの分泌低下と下垂体からの卵胞刺激ホルモンの異常までの増加というアンバランスが、更年期の特徴であり、からだ全体の状態にさまざまな影響を与えます。
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■ホルモンの失調が引き金となって、おこるさまざまな症状 |
@、ホルモンと関わりの深い自律神経が失調を起こす。
A、ホルモンのアンバランスは、精神面にも影響を与えて、さまざまな不定愁訴や
精神神経症状を起こす。
B、エストロゲンの低下によって、サイトカインが活性され免疫のコントロールが不安定になる。
C、エストロゲンの低下によって、皮膚や粘膜や骨が弱くなる。
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■具体的な症状 |
☐血管の拡張によって、のぼせ(ホットフラッシュ)や足腰の冷え、いわゆる「冷えのぼせ」の状態 が多くみられる。 ☐血圧が不安定になって、めまいや耳鳴りなどの症状が起こりやすくなる。 ☐血中カルシウム値の不安定やアドレナリンが出やすい状況のため、ストレスやちょっとしたきっ かけで筋肉が収縮しやすくなり、肩こりや腰痛が現れる。 ☐過剰なサイトカインのため、不眠・寝つきが悪くなる、頭痛、イライラ感などが起こる。不安感や 憂うつ感、無気力感も起こる。 ☐保水性が低下し、膣炎、皮膚瘙痒症、性交痛などを起こしやすい。 ☐皮膚の代謝が低下し、しみが増えてくる。
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女性の更年期障害の治療法 |
現在、更年期障害の治療法として一般的なのは、ホルモン補充療法および漢方療法です。 そのほか、自分でできる自律訓練法や近年流行のアロマテラピー(芳香療法)や音楽療法なども心身ともにリラックスできて、更年期の症状を和らげるのに効果があります。 更年期は、からだの変化だけでなく、社会的、家庭的にも大きな変化の見られる時期です。 したがって、夫婦のあり方、趣味や運動を積極的に行う、気分やからだをリフレッシュさせる、よい友人関係を広げるなど、自分から周りの環境をよくしていくことも重要です。
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ホルモン補充療法 |
更年期のさまざまな不快症状は、卵巣機能の低下に伴って、女性ホルモンの分泌が急激に減少したり、不安定になって起こります。そこで、ホルモンの減少をなだらかに行われるように、外部から飲み薬や注射などによってホルモンを補い、からだが無理なくホルモンの減少についていけるようにしよう、というのがホルモン補充療法です。 ホルモン補充療法は、いわゆる不定愁訴、不眠やうつなどの精神神経症状などに顕著な効果を発揮します。そのほか、肌がつややかになったり、骨粗しょう症や動脈硬化の予防効果もあります。 ホルモン補充療法の気がかりなこと
子宮ガンや乳がんの発ガン率が高まることへの心配と、子宮筋腫や子宮内膜症など女性ホルモンの影響で起こる病気の既往者には、その再発の危険があること、「やめどき」が難しい、などがあげられます。 天然ホルモン補充療法 近年、更年期障害の治療法として最も注目を集めているのが、からだに優しく安全な植物由来の天然ホルモン補充療法です。
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女性にやさしい漢方療法 |
更年期障害の症状は、ホルモン以外のさまざまな生理活性物質も関係しています。 漢方療法はホルモンだけをいじるのではなく、からだの多方面を調節しながら症状の原因を取り除いていきます。 更年期障害には漢方薬はとても効果を発揮します。 代表的な漢方薬を紹介します。
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女性にやさしい漢方療法 |
◇血管の拡張によって起こる症状:のぼせ(ホットフラッシュ)・冷え *代表的な漢方薬:桂枝茯苓丸・桃核承気湯・温清飲・加味逍遥散
◇血圧が不安定になって起こる症状:めまい耳鳴り *代表的な漢方薬:柴胡加竜骨牡蛎湯・桂枝加竜骨牡蛎湯・釣藤散
◇筋肉の収縮が原因で起こる症状:肩こり・頭痛 *代表的な漢方薬:葛根湯・疎経活血湯・八味地黄湯
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女性にやさしい漢方療法 |
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◇精神的な症状:不眠・イライラ・不安感・憂うつな気分・無気力 *代表的な漢方薬:半夏厚朴湯・柴胡加竜骨牡蛎湯・三黄瀉心湯
◇保水性が悪くなって起こる症状:膣炎・皮膚瘙痒症・性交痛・頻尿 *代表的な漢方薬:八味地黄湯・四物湯・当帰飲子
◇色素が沈着して起こる症状:しみ *代表的な漢方薬:桂枝茯苓丸・当帰芍薬散・加味逍遥散
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更年期を軽く乗り切るために |
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更年期をうまくのりきるためには、「栄養バランスに気を配った食事をとる」「ウォーキングや軽いジョギングなどの適度な運動をする」ことの他、「趣味や仕事、ボランティア活動など何か打ち込めるものをもつ」など、普段の生活の中で取り組めることも大切となります。 更年期を迎える時期は、子供の独立や結婚、親の介護をするようになったりというような環境の変化、また、家庭内や職場などでのストレスが重なる時期でもあり、これも更年期症状の症状を引き起こしたり悪化させたりする原因となります。 ご家族や友達の方が、じっくり話を聞いてあげると、気持ちが楽になり、更年期症状が緩和されることも多いので、特にご家族の方は、会話の機会をできるだけ多くもつよう心がけてください。
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女性更年期のチェックリスト |
更年期の女性によくみられるからだのチェックリストです。 あてはまる症状があれば点数をつけて、合計点をだしてみましょう。
女性更年期の健康チェックリスト 複数の症状がある項目は、いちばん強い症状に点をつけてください。
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合計点についてのアドバイス
0〜25点 異常はありません。
26〜50点 食事や運動に気をつけるなど、日常生活に注意をしながら 天然ホルモン補充療法をすればいいでしょう。
51〜65点 漢方薬と天然ホルモン補充療法で、早期に症状改善します。
66〜80点 漢方薬と天然ホルモン補充療法による、多少長めの計画的な治療が必要です。
81〜100点 心療内科などの専門的な治療が必要な場合もありますから、専門医にも ご相談ください。
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男性の更年期 |
男性更年期の正式な病名は「性腺機能低下症」。男性ホルモン(テストステロン)は筋肉を増やす働きだけでなく、認知機能や血管の柔らかさ、脂質代謝や性機能などに広く関係している。 分泌量が減ってくると、集中力や意欲が低下し物覚えも悪くなってくる。筋力も弱くなり日常生活や行動範囲も狭くなる。排尿異常や男性機能も衰える。 米国の研究によると、男性ホルモンはストレスの影響を受けると分泌量が大きく減少する。神経質でストレスに弱い人ほど男性更年期になりやすい。
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男性は女性ほどの大きな変化がない |
女性の更年期には、「閉経」というはっきりした区切りがあり、その年齢には個人差はあるが、平均的には50歳の前後10年間と、一定の幅に限られています。 一方、男性の場合、生殖機能が終わる年齢も個人差が非常に大きく、その衰え方は女性に比べて非常に緩やかです。 しかし、40代半ばから50歳前後にかけて、男性ホルモンはその濃度は低下しはじめ、それにほかの「心理的要因」や「社会的要因」が相互に絡み合って発症します。
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男性更年期症状の特徴 |
日本での調査によると、男性の更年期の症状には、疲労感や睡眠障害、抑うつ感や不安感、集中力の低下など精神神経症状が多く、肩こり・腰痛なども目立ちます。 抑うつ感や不安感といった、いわゆる「気分の障害」は、同時に性欲減退やインポテンスなどの症状を伴うことも多く、この性機能の低下が、生活意欲の減退や自信喪失、憂うつ感を深めるという悪循環を生み出します。
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この時期に大切なこと |
❏ 1日7時間以上の睡眠をとると、男性ホルモンの低下を抑えることができます。
❏ 音楽を聴いたり温泉に入ったりすると、自律神経のうち副交感神経を刺激することになり リラックスできる。
❏ 趣味を持つこともとてもよい。脳の老化を予防するためにも必要なことである。
❏ カロリー過多は男性ホルモンの低下を招く。食事は腹八分目にする。
❏ ウオーキング、ゴルフなど適度な運動を楽しみながら、筋力・体力の低下を予防する。
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男性更年期障害の代表的な漢方薬 |
⑴ 腎気虚衰:年よりふけてみえる、皮膚の乾燥、白髪、記憶力低下、性機能の減衰など
代表的な漢方薬:八味地黄丸加減・牛車腎気丸・鹿茸大補湯
⑵ 肝腎陰虚・心腎陰虚:血圧が高め、動悸、眠りが浅い、不安、イライラ、耳鳴りなど 代表的な漢方薬:杞菊地黄丸加減・知柏地黄丸・天王補心丹・柴胡加竜骨牡蛎湯 三黄瀉心湯など
⑶ 肝胆鬱熱:憂うつ、イライラ、神経過敏、動悸、夢多い、目眩、口が苦いなど
代表的な漢方薬:杞菊地黄丸加減・知柏地黄丸・天王補心丹・柴胡加竜骨牡蛎湯 三黄瀉心湯など
⑷ 心腎不交:不眠、動悸、不安、耳鳴り、性機能の減衰など 代表的な漢方薬:天王補心丹加減代表的な漢方薬:温胆湯加減
⑸ 気血虚損:疲労倦怠感、皮膚や毛髪につやがない、食欲低下、性機能の減衰など
代表的な漢方薬:補中益気湯・人参養栄湯・鹿茸大補湯
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男性更年期のチェックリスト |
◇男性の更年期は一般には45〜60歳頃◇
更年期の男性によくみられるからだのチェックリストです。 あてはまる症状があれば点数をつけて、合計点をだしてみましょう。
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合計点についてのアドバイス |
合計点についてのアドバイス
中または強の評価が3つ以上あれば、
男性更年期障害の可能性があります。
合計点数が10点以上の場合は、早めの治療が必要です。
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